そろそろ店じまい?

40代のくたびれたおっさんゲイのよしなしごと

カニには見えないが…

 惑星状星雲の話が出たところで、ついでにカニ星雲である。

おうし座の「カニ星雲」M1

 

 こちらは惑星状星雲よりさらに不定形で、なんかモヤモヤした煙みたいな見た目である。それもそのはず、惑星状星雲は、寿命の尽きかけた星が白色矮星になる過程で放出したガスが、紫外線で照らされて光って見えるものだが、こちらカニ星雲は、もっと質量の大きな巨星が超新星爆発を起こして、木っ端微塵に吹き飛んだ残骸なのだそうな。

 この爆発は、1000年くらい前に地球からも見えたようで、藤原定家の日記『明月記』に記録が残っている。これは定家自身が直接見たわけではなく、彗星を見て客星(ある時突然現れてしばらくするとまた消える星)に俄然興味をもった定家が、知り合いの陰陽師に尋ねて古い記録を調べてもらい、そのメモをそのまま日記に挟み込んだものらしい。いずれにせよ、次のように書かれている。

 天喜二年四月中旬以後丑時、客星出觜参度、見東方、孛天関星、大如歳星。

 「孛」がいまいちよくわからないのだが汗(たぶん「輝く」という意味でいいのかな、と。「天関星」はその前の「東方」と同じで、場所を表す副詞句?)、ざっくり訳すと、

 「1054年の(新暦では)5月なかばより後、夜中の2時に、オリオン座の方角にヘンな星出た。東の方に見えて、おうし座ζ(ゼータ)星のあたりで輝いた。木星くらいの大きさだった。」

 旧暦4月(新暦5月)下旬の夜半にはおうし座は見えないので、これは5月の間違いと考えられているらしいが、いずれにせよ、世界的にも珍しい、望遠鏡が発明される前の超新星の観察記録である。平安時代の人も、夜空を見上げて急に明るく輝く星を見つけて、「なんじゃありゃ」「大凶事の前ぶれか」と騒いでいたのかと思うと、最近やたら星ばかり見ているおじさんとしては、何だか親近感が湧くw

 さて、急に爆発して木星くらいの明るさに輝いて見えたというこの超新星だが、中国の『宋史』の記述によると、

 至和元年五月己丑、出天関東南可数寸、歳余稍没。

 「1054年の7月4日に、おうし座ζ星の東南およそ数寸のところに出て、1年あまりで消えていった」

とのことなので、1年以上は明るく見えていたらしい。今ではすっかり暗くなって、上の写真のようなガスがモヤモヤと残っているきりである。

 ちなみに、「内部の微細なフィラメント構造(上の写真にも赤っぽい筋がちょっとだけ写ってます)がカニの脚のように見えることから、カニ星雲と名付けられた」と、ものの本には書いてあるのだけど、どう見てもカニには見えない(個人の感想ですw)。