そろそろ店じまい?

40代のくたびれたおっさんゲイのよしなしごと

カビてましたが…

 と、いうわけで、突如40年以上前の天体望遠鏡を押し入れの奥から引っ張り出すことになったわけである。さんざん苦労してボロボロの段ボール箱を引きずり出し、中身を取り出して組み立ててみる。意外と覚えているもので、ちゃっちゃと組み上げることができた。おお、久しぶりだなぁ。てか、なんか思ったよりでかいな。しかもこんなに重かったっけこれ…

40年ぶりの雄姿w


 うちの望遠鏡は、ビクセン製の口径10cm、焦点距離1mのニュートン反射望遠鏡で(RP100という型番がついている)、初代のポラリス赤道儀に金属製のピラー脚がついたものだ(この脚が重くて、セットで20kgほどある。子供の頃には、木製の三脚の方がよかったとずっと思っていたものだった)。この当時には入門者向けの定番セット的なものだったようだが、最近ではこういう口径比f10なんていう長焦点の反射式は全然流行らないらしく、ニュートン式ならf4とかf5の鏡筒が普通らしい(もっと長さが短くてコンパクト)。接眼レンズはK20mm、HM12.5mm、Or5mmの3本が付属していて、うちの鏡筒との組み合わせでは、それぞれ50倍、80倍、200倍になる(これも、Kはともかく、今ではHMやOrの接眼レンズなんてあまりないのだそうな)。ケルナーの20mmは見やすくて使いやすい。ミッテンゼー・ハイゲンス12.5mmはアイポイントが低くて覗きにくいけど、見え自体は悪くない。オルソの5mmはとてつもなく覗きにくい上に、いつ見ても暗くてモヤモヤで月以外はロクに見えなかった、ということなんかも思い出した。「そもそも口径10センチで200倍は無理があるのかも。150倍程度になる7㎜くらいの接眼レンズが欲しいな」と思っていたものだった。

 もともとこの望遠鏡は、1970年代の後半に、当時小学生だった兄が、誕生日祝いか何かで祖母に買ってもらったものだ。ところが兄はすぐに飽きてしまったようで(というか、はじめから特に興味もなかったのかもしれない)、ほぼ全く使わずにいたのを、数年後に11、2歳になった自分が、引っ張り出してきて強奪したのだった笑。おそらく購入当時としてはそこそこ高価なものだったと思うのだが、祖母が費用を出したのは、おそらく父が頼んだからなのだろうし、祖母も父も共に鬼籍に入った今となっては、二重の意味で形見のようなものと言えなくもない。ほとんど全く使っていなかったのに、誰も捨てようとせずにずっとしまい込まれていたのは、そんなせいもあるのかもしれない。これが今でも動くなら、改めて使ってやるのも面白いじゃないか…

 と、ちょっぴり感傷的な気分にもなりつつ、鏡筒先端部の蓋を開けて中を覗きこんで見たらびっくり。

 …あっちゃー。

 主鏡がカビだらけ汗。茶色っぽいカビにもくもくと覆われて、しかも端の方はところどころメッキが剥げたようで、黒ずんだ染みもできている。

 …こりゃ、ダメかもしれんね。(^^;

 そりゃあ、湿気た押し入れの中に、段ボール箱に入れただけで光学機器を何十年も放置していたら、こうもなりますわな。この分だと、副鏡や接眼レンズもカビてるかもしれんし、素直に新しいのに買い替えた方がいいだろうなぁ。

 一気に脱力してしまった。苦労して引っ張り出して組み立てたのになぁ。結局無駄骨だったか、やれやれ。また片付けるのめんどくさいな。てかこれどうしよう。やっぱり捨てるに捨てづらいしなぁ。もし捨てるとしても、粗大ごみの手続きとかめんどくさいなぁ。やっぱ見なかったことにして、もう一度そのまましまっておくか…

 メーカーに再メッキを頼む、という方法も一瞬頭をよぎったのだが、そもそもこんな古いもの受け付けてるかどうかわからんし、手間や費用を考えると、一式新しいものに買い替えた方が、どう考えてもより手っとり早く幸せになれる。これはしょうがないね。

 …うーん、ま、どうせ捨てるんなら、一度自分で分解して洗ってみるか。それでダメなら諦めよう。

 というわけで、工具箱からドライバーを出してきて、主鏡部の分解に挑戦。説明書はもうないので、はじめちょっと手間取ったのだが、やってるうちに思い出して、無事に主鏡部だけパカッと外すことに成功(実はガキの頃に、意味もなくあちこち全部分解してみたことがあったのだ。そもそもそのせいで調整がだいぶ狂ったりしているのかもしれないのだけど、まあガキって大体そんなもんでしょw)。いちおう、カルキ分を飛ばした方がよいかなということで、一度沸かしてから冷ました水を準備して、カメラのレンズ用のクリーナーペーパーに食器洗い用の中性洗剤も用意して、作業開始。表面を傷つけないように、そーっとそーっと濡らしながら拭いてゆく。

 …おお、なんかきれいになったぞ。

 古いカメラレンズのカビと同じように跡が残るのかなと思ったのだけど、どうも思ったよりもずっときれいになった。ぱっと見、カビの跡は全く残らず、ピカピカのきれいな鏡に戻ったぞ。周辺部のメッキが剥げたところはもちろん直らないけど、幸い中央部には傷・汚れは見当たらない。口径9センチ分くらいは生きてるから、まあ御の字じゃね?

 こりゃ行けるかも、とホクホクしつつ、半日ほど乾かした後で、鏡を再び取り付ける。光軸調整の仕方もやってるうちにどんどん思い出してきて、ひと通り合わせておく(と言ってもだいぶ適当だけど。まあ所詮カビてるし笑)。準備のできた鏡筒を再び架台に載せて、ではいよいよちゃんと見えるかどうか、今度は接眼レンズをつけて試してみよう、と思ったところで、次の衝撃w

 (またもや続く)