そろそろ店じまい?

40代のくたびれたおっさんゲイのよしなしごと

40年ぶりに木星を見る

 さて、中華製部品の助けを借りて復活した40年以上前のオンボロ望遠鏡、いよいよ実際に空を覗いてみることとなったわけである。2022年2月のある暮れ方のこと、日没を待ちかねるようにして、狭い2階のベランダにガタガタと機材を一式持ち出して、設置した。さて、何を見るべかな。

 と言っても、何しろ建て込んだ住宅地の狭いベランダ、空は南から西にかけての一角しか開けていない。見える星は実は限られている。日没直後の空をざっと見渡すと、おうし座、オリオン座、ぎょしゃ座、ふたご座、おおいぬ座こいぬ座あたりが確認できた(昔とった何とかで、1等星2等星くらいなら意外とどれがどれだかおぼえていた。冬の星座は明るい星が多くてわかりやすい)。とりあえず、オリオン座大星雲でも見ますか、と思ったところで、西の空のだいぶ低いあたりに、妙に明るい黄色っぽい星が1つ光っているのが目についた。え? 木星じゃねあれ? 今見えるんか?

 40年ぶりの初星見が惑星、いいでないのいいでないの。というわけで、さっそく低倍率の接眼レンズをつけて(20㎜50倍)、架台のクランプをゆるめて、ファインダーを覗きながら木星らしき星を視野に入れて、もう一度クランプを締めて接眼レンズを覗く。ちょっとずれたがちゃんと星は視界に入っていた。アウトフォーカスの星像も見た瞬間に思い出した。ああ、そうそう、こんな感じに見えるんだった。ピントを送る方向がどっちだかとっさにわからなくて、最初行ったり来たりするのも昔のまま(笑)。子供の頃におぼえたことというのはいくつになっても忘れないものらしく、40年間一度もさわったことがなかったのに、ほとんど自動的に全ての動作をちゃっちゃと済ませて、1分もしないうちに視界の中にピントの合った星が浮かんでいた。

 やっぱり木星だ。きれいに並んだガリレオ衛星も3つまではっきり見えている。いやあ、懐かしいなぁ。昔見たのと変わらん。びっくりするほど小さいのも昔と変わらんけどw、やっぱ実物をこの目で見るのはいいもんだなぁ。

 その後12.5mm(80倍)の接眼レンズに換えて、それでもやっぱ小さいなぁと思って、5mm(200倍)の接眼レンズで覗いて、「うわ、もやもやで暗くて全然だめだこりゃ」と思ったところまで昔と同じ。倍率を上げると、気流のせいで画面が揺らめいて川の中を覗きこんでるみたいなのも(「そうそう、こんな低空でしかも日没直後じゃシーイングが悪くて惑星なんか見られたもんじゃないんだった」ということも思い出した)、安物架台の建て付けの悪さとベランダのたわみのダブルパンチで、ちょっと鏡筒に触れただけでぼよよーんと視界が派手に揺れまくるのも、全て昔のまま。いや、思い出すなぁ。懐かしいぞこれ…

 …た、楽しい。(^_^;

 何はともあれ、適当にカビを拭き取っただけの鏡でも一応ちゃんと見えたので安心した。まあ、本当は新品の頃に比べると画質はだいぶ落ちてるのかもしれんけど、そもそもこんなグラグラで視界は常に揺れてるようなもんだし、しかも真夜中でも余裕で本が読めるくらい街灯ぎらぎらの、アホみたいに明るい町中の最悪の環境だから(星を見る人の世界では「光害」と言います)、画質なんて多少良くても悪くても大して変わらんでしょ。こんだけ見えればまあ御の字。これで、別に新しいの買わなくてもまだまだいろいろ楽しめそうだぞ(まあ、またすぐに飽きるかもしれないけどw)。

 かくして、夜になって晴れてると、おっさんがいそいそとベランダに出てゴソゴソやる日々が始まったのである。

木星(これは最近になって撮った写真w)