そろそろ店じまい?

40代のくたびれたおっさんゲイのよしなしごと

球状星団が見えない話

 さて、念願の天王星もけっこうあっさり見ることができてますますいい気になっている星見おじさん、次はいよいよ満を持してこれまた念願の球状星団に挑戦である。が、ここで一つ問題が。

 球状星団ちゅうのは銀河系(天の川)の中心方向にたくさん分布しているのだそうで、天の川の濃く見える方向=いて座・さそり座などのいわゆる「夏の星座」の方向にいっぱいある。つまり、冬の空(天の川が全体として薄い)にはあんまりない。

 あっちゃー、夏まで待たんとだめか。(ちなみにこれは2022年2月の話)

 と、ここで朗報が。例によってネット上を検索してみると、「冬に楽しめる数少ない球状星団の一つ」とかいう記述があるのを発見。なになに? うさぎ座のM79? うさぎ座ちゅうたらオリオン座の足もと、ちょうど今うちのベランダから一番見やすい真南の下の方にばっちり見えてるじゃないか。というわけで、さっそく望遠鏡で探索開始である。

StellariumでM79の位置をシミュレート


 オリオン座の右足(って言うのか?)、リゲルと反対側の足もとの2等星(κ星。サイフという名前がついているらしい)からまっすぐ地上へ向かって高度を下げてゆくと(天の座標で言えば南西方向)、うさぎ座のα星アルネブ(3等星)がある。そのまま同じ方向に進むと、アルネブがファインダーの中央に来たあたりで、もう一つの3等星ニハルが視界に入ってくる。さらに同じ方向へ進むと、ニハルが視野の中心を少し越えたあたりで、5等星が一つ視界に現れる。M79は、この5等星から少しだけ北東方向へ戻ったあたりにあるはず。うん、大体この辺かな。よし、いよいよ接眼レンズで見てみるぞ。

 …ない。

 どうにも見つからない。例によって、ファインダーの中心が望遠鏡の光軸とずれているので、微動ハンドルを動かしてあたりをしらみつぶしに探してみるのだが、ない。というか、星図をチェックすると、50倍の接眼レンズをつければ、目印の5等星を視野の西の端の方に寄せるとM79も同視野内に見えるはずなのだが、どうにもこうにも見つからない。また星図によれば、球状星団を囲むように9等星くらいの星がいくつかあるのだが、それらは皆ちゃんと見えていて、それぞれの位置関係もちゃんと星図通りになっているので、場所は間違っていないはずだ。なのに、中心にあるはずの、肝心の球状星団だけが全く見えない。倍率を変えたり、視野の端にもっていったりまた中央に戻したり、斜めから覗いてみたり、「流し目」という、視線を中心から逸らして目の端の方でぼんやり見るやり方とか(色がわからないほどのかすかな光に関しては、人間の瞳は中心より周辺の方が感度が高いのだそうな)、いろいろやってみるのだが、どうにもこうにも、M79があるはずのその場所だけ何もない空白で、明るめの闇が広がっているだけ(これは光害のせいか、特に低倍率だと望遠鏡で覗いた時にも背景の空は真っ暗ではない)。

 …なんじゃこりゃ。神隠し? 星団ごと爆発して消えたの? (^^;

 その後も何回もやり直してみたのだが、何度やってもやはり何も見えなかった。うーん、初めての挫折w。球状星団て、うちの機材じゃ見えないのか?汗

 さて、その日は結局諦めて、満たされぬ思いを抱えたまま、眠れぬ夜を過ごした(うそ)その数日後のことである。この時期は、早朝の東南の空に水星と金星と火星が一緒に見えるということで、ある平日の朝、やたら早起きしてベランダで眠い目をこすりながらゴソゴソ、ということがあった(本当に我ながら何をしてるんだか)。5時ごろになってふと南の空を見ると、低いあたりに火星でもないのにやたら赤い星が。

 …アンタレスだ。

 まだ冬だけど、夜明けごろになればもう夏の星座も見えてくるんだね~。あれ、そういえばさそり座に球状星団てなかったっけ。

 M4。メシエカタログの中でも大分若い番号だし、たぶんメシエさんの時代から空で目立ってたんだろうw。明るさのデータを見ても、M79の8等に比べてこちらは6等くらい、見かけの大きさも5倍くらいある。なるほど、M79は「球状星団の中でも小ぶり」とか書いてあったし、小さくて暗いから見つからなかったのだ。相手が悪かったわけだ。M4なら見えるに違いない。「M4は、夏の空を代表する球状星団の一つ」とか書いてあるし。しかも場所がなんとアンタレスから西に1度。ファインダーをアンタレスに合わせるだけですぐ近くまで行けるじゃないか。よし、さっそく見てみよう。

 …見えない。

 また同じことが起こった。アンタレスから真西に行くと、3つの8等星が斜めに並んだ星並びがあって、そのすぐ隣にM4があるはずなのだが、これが全く見えない。まわりの星はすべて星図通りに確認できるのに、そこにあるはずの球状星団だけが、忽然と姿を消して、いくら目をこらしても何も見えない。空白。

 …なんじゃこりゃ、俺が見ようとすると、みんな爆発して消えるのか? (^^;

 いやー、まいった。これはどうも、うちの機材と環境では、そもそも球状星団は見えないのかもしれないなぁ。残念だ…

 結論から言うと、実は全く見えないというわけではなくて、文字通り「相手が悪かった」だけだったのだが、それがわかるのはさらにまた数日後の話。

 

うさぎ座の球状星団M79(これはもちろん後になってから撮った写真)。小ぶりだが、形が整っていてきれい。もちろん、爆発してなどいないw

 

こちらがさそり座の球状星団M4(もちろんこれも後になって撮った写真)。大型だが、密集度が低くて、なんだか散開星団みたい。