そろそろ店じまい?

40代のくたびれたおっさんゲイのよしなしごと

ついに銀河を見た!

 さて、どうにも銀河や球状星団が見えない(泣)、ということで、一番見やすいと思われるものを調査して、これが見えなければ今の環境・機材ではいよいよ無理、という背水の陣で臨むことにしたオッサンである。狙うはおおぐま座のM81, 82銀河とヘラクレス座のM13球状星団ヘラクレス座は今の時期(2月の話です)、明け方近くならないと見えてこないので、まずは銀河から行くか。が、ここでまたちょっとした問題が…

 おおぐま座はうちのベランダからは見えない汗

 M81, 82は北斗七星の近くにある。つまり、北の空だ。うちのベランダは南向きなので、天頂より北側は全く見えない。おおぐま座こぐま座カシオペア座などは軒並み全滅である汗(そもそも北極星も当然見えない。なので極軸合わせは常にドリフト法である=極軸合わせるだけで毎回30分くらいかかる。しかも完全にぴったり合ったためしがない泣)。

 実はうちの敷地内で1ヶ所だけ、望遠鏡を設置して北天の空を見られる場所があるのだが、それは玄関のドアと家の門の間の狭いスペースで(玄関ポーチと言うのかな)、ここに望遠鏡を立てると家の門が開かなくなって家への出入りができなくなるし、目の前の道路を通る人から丸見えで恥ずかしいので、普段は使っていない。が、この際背に腹は代えられまい。どうせ、認知症の親を寝かしつけた後の夜中しか天体観測などできないのだから、もう人通りも減っているだろうし、大丈夫だろう。

 というわけで、2月も末のある晴れた寒い夜のこと、夜11時を過ぎてから玄関先に機材を一式持ち出して、ゴソゴソと設置する。数十年ぶりに極軸望遠鏡を覗いて北極星での極軸合わせである(なにしろ40年も前の代物なので、極望の視野内のスケールとかは今ではずれてて役に立たないのだけど、北極星の時角は今はネット上でリアルタイムですぐに確認できる。便利な世の中だw)。頭上の電線に邪魔されて北極星が大変見づらい。さらに途中で、極望の光軸が大幅にずれていることにも気づいたが、もうめんどくさいからいいやテキトーでw。

 2階のベランダもあちこちからの迷光が射しまくっているのだが、地上はさらに街灯の直撃を受けてひどい明るさである。というか、上を向くと直視できないほどまぶしい。ほんとに、なんでこんなアホみたいに明るくするんだろう。ファインダーも接眼筒も、覗いてみると横から目に光が入ってきて反射してきわめて見づらい。というか、これではかすかな星の光を見るどころの騒ぎではない。参ったぞ。ここまで実害があるとは思わなかった。

 しばし考えて、昔大判カメラで写真を撮る時に使っていた冠布(頭からかぶるでっかい黒い布)を引っ張り出してくる。かぶって覗くと、外光が完全にカットされてとても快適。ちょっとあったかいし笑。まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。さらに、これをかぶっていれば表を通る人が全く見えなくなるので、恥ずかしくなくなるのもよい。ただし、向こうからしたらいきなり門の中に望遠鏡ごと黒い布をかぶった人が突っ立ってるわけで、あやしさ全開でビビるかもしれないのだけど、まあいいやw。あと、ちょっと油断すると呼気でレンズが曇って急に見えなくなって焦るので注意が必要。

こういうやつw


 さて、ではいよいよ銀河の探索に出発だ。北斗七星のひしゃく側の先端の星がドゥベーという名の2等星で、M81, 82はそこから天の北西方向に向かったところにある。ファインダーにドゥベーを入れてから鏡筒を天の北西方向に動かしてゆくと、ドゥベーが視野から外れたあたりで、5等星くらいの星が4つほど半円状に連なったものが2つ背中合わせに並んだような星並びが見えてくる。その間を抜けて同方向にそのまま進むと、5等星がもう一つぽつんと見えてくるのだが(おおぐま座の24番星)、M81, 82はその少し手前にあるはず。例によってファインダーでは全く見えないが汗、大体この辺だろうというところに入れて、接眼レンズを覗く。

 …もちろん、いくつか星は見えているが、他には何も見えない。うん、そりゃそうでしょうとも。ファインダーの光軸ずれてるしね笑。慌てない慌てない。というわけで、微動ハンドルを試しに西へ回して、そろそろとあたりを探索してみる。うーん、何もないな。さすがにこんなに離れてるわけはないか。ちょっとだけ南に移動してから、戻ってみることにしようか…

 …???

 ん、今なんかなかったか? え? あそこ、なんかあるよね。なんか、小さいシミみたいなもんが、見えたような…

 …!!!

 あ、なんかあるよ、確かになんかある。なんかよくわかんないけど、なんかぼうっとしたもんが見えるよあそこ!

 慌てて微動ハンドルを回して、視野を少しずつずらしてみる。レンズのゴミか反射か、目の錯覚みたいにも見えるのだが、視野を動かすと、そのぼうっとしたシミみたいなものも視野と一緒に動く。間違いない。あれはこっち側(レンズや眼球)じゃなくて向こう側(宇宙)にあるものだ。じっと見つめるとなんだか薄れて見えづらくなってしまうのだけど、目をそらすようにしてなるべく見ないようにして見るwと、確かにそこにある。

 「…ああ、あれだ、あったよ」

 思わず実際に声が出てしまった。星図と突き合わせて確認してみたが、間違いない、M81だ。おお、ついに望遠鏡で銀河を見たぞ。いやー、これが銀河か。うちの40年超のオンボロ機材でもちゃんと見えるんだなぁ。いやー、それにしても…

 …薄っす!

 「大きな渦巻銀河」だと聞いていたのだが、見えていたのは、渦どころか、見えてるのか見えてないのかすらよくわからないくらいの、小さくてうっすーい光のシミだった。なんか、ほこりみたいって言うか、ゴミみたいって言うか、カビみたいって言うか…笑

うちの望遠鏡で見た、M81イメージ図w


 いやいや、そういうことは問題ではない。これをこの目で今実際に見ているということが大事なのだ。何しろ、調べたところでは、この銀河までの距離はおよそ1200万光年(!)。アンドロメダよりさらに4~5倍遠い。今見ているこのかすかな光は、実に1200万年前の光なのだ。というか、これはオッサンが生まれてから今までの人生で見たあらゆるもののうちで、文句なしに一番遠くにあるものだ。この年になって、遠くを見た記録更新であるw

 …楽しい。(^_^;

 その後実に20分以上にわたって、黒い布をかぶって突っ立ったまま、アホみたいに無言でひたすら、うっすーい銀河を見つめ続けていたオッサンでありました。「いったん見失ったらもう二度と見つけられんかもしれん」と思って目を離せなかったのもありますがw、1200万年前にはるか彼方でぴかっと光った光が、とんでもない距離をはるばる旅してきて、それを今宇宙の片隅で自分がひとり偶然目にとらえているという、この感じがなんとも神秘的でよいのですな。そうそう、ガキの頃に感じた面白さもやはりこれだった。いくつになっても、楽しいものは楽しいね。

 で、実は、うちの20㎜接眼レンズだと、M81を視界の隅に入れれば、M82も同一視野に見えるはずなのだが、こちらは何度やってもどうしても見えなかった汗。まあいいや、とりあえず1個見えただけでも目標は達成。光害地でも、対象をちゃんと選べばうちの機材でも銀河が見えるということが分かって嬉しい。次は球状星団だな…

 (この後またネットをいろいろ見ていたら、同じような光害地で観察している人で、M81は見えるけどM82は見えない、と書いている人が複数いるのを見つけた。やはりそういうものなのですな。納得すると同時に、眼視では見えない、ということが確定してしまうと、やはり残念に思えてしまうのもまた人情というもの。そこでこのあたりから、「写真も撮りたい」という欲もだんだんと出てくるのだけれど、それはまた別の話。)