そろそろ店じまい?

40代のくたびれたおっさんゲイのよしなしごと

メキシコの帽子?

 夜更かしをして球状星団M3を見た時のことである。うしかい座アルクトゥールスからたどってM3を探したわけだが、うしかい座が天頂付近に見えているということは、同じく春の星座の代表のおとめ座も真南の方に見えているということだ。おとめ座という星座は、α星のスピカ以外はなんだか暗くて、うちからは肉眼では全然見えないのだが、スピカだけは南の空に白く光っているのが確認できた。おとめ座にはそういえば、ソンブレロ銀河ってなかったっけ…

ソンブレロ銀河」M104。ちょうど真横から見る形の、端正な紡錘形をした銀河で、真ん中に真っすぐに暗黒帯の線が入ったところが、メキシコのソンブレロ帽みたいに見えるということで、そのあだ名がついたらしい。昔図鑑かなにかで見た写真が、たいそう印象的だった。なので、未だに名前もおぼえている。ひょっとして、見られないかな…

ソンブレロ

 

 星図を調べてみると、M104はおとめ座の中でも一番南西の方、からす座との境界付近にあるらしい。からす座からたどった方が近そうだ。からす座という星座は今まで見たことがなかったのだが、3等星が4つ、コンパクトな四角形に並んだとてもわかりやすい星座で、双眼鏡でもファインダーでもすぐに確認できた。さっそく、M104の探索に出発だ。

 からす座の四角形の北東端の星が、アルゴラブという3等星だ(ファインダーで見ると、すぐ近くにもう一つのやや暗い星を伴っているので、すぐにわかる)。ここからまっすぐ天の北方向に移動すると、アルゴラブが視野の端に行ったあたりで、3つの6等星がやや細長い二等辺三角形に並んだ星列が視野の真ん中に来る。この三角形の北東の端の星から、三角形の辺の長さと同じくらいまた北東に進んだところに、7~8等星がいくつかごちゃっとかたまったものがある(ファインダーでは見えないことも多い。この時はけっこうはっきり見えた)。ここで接眼レンズに覗きかえると、4~5個の星が視界の中に集まっているのが見える。この星の集まりを確認出来たら、そのままさらに北東方向へ進む。うちの20㎜レンズ(視野角0.86度)だと、この星列が視野の南西端の外へちょうど出るか出ないかのところで、逆側からさらに小さな4つの星が集まった星列が見えてくる。これは3つの星が狭い範囲でほぼ一直線に並んだすぐそばに、もう1つ星がくっついたとても特徴的な星列で、なんだか矢印のように見える。この矢印を視野の真ん中に置いて、これが指し示す西の方の先を見れば、20mmレンズならM104はもう視界の端に入っている。

 矢印の星列の先をたどると、10等星くらいの暗い星が逆くの字型に並んだ星並びが見える。これのちょうど角にあたる部分に、M104があるはず…

 …!!

 あった、あれだ。ものすごく小さいけど、案外はっきり見える。おおぐま座のM81よりむしろ見やすいくらいかも。明らかに他の恒星とは違う、両端がとがった細長い光のスジが、そこにはあった。

 おおー、ソンブレロ銀河も見えたか。へー、これがそれかぁ。なるほど、確かにソンブレロ帽みたいに…

 …全く見えない。(^^;

 帽子どころか、ごくかすかに光るスジにしか見えない。中央の部分がより明るくて、言われてみれば、真ん中が少し膨らんでいるように見えなくもないけど、あくまでただのスジ。暗黒帯?なにそれ?て感じw

うちの望遠鏡で見た、M104イメージ図w


 それにしても暗い。まわりのかすかな星も含めて、視野全体がものすごく暗いので、えらい集中して目を凝らさないと、何もわからなくなる。ずっと見ていると、しまいには視界がささくれだったようになんだかざらざらして見えてきて、目がチカチカしてくる。ちょっとまぶたを閉じて目を休めてから改めて覗くと、あ、またちゃんと見えるようになった。

 そんなことを繰り返しながら、またもや数十分間にわたって、全然ソンブレロには見えないソンブレロ銀河を飽かずに眺め続けたおじさんでありました。これは正直全く見えないかもと思っていたので、けっこう感動した(実は、いろんな銀河のうちでもこの銀河は明るくてかなり見やすい方だと後から知った。偶然思い出したのがソンブレロ銀河でよかった。これが「回転花火銀河」だったりした日にゃあ、目も当てられない笑)。なんちゅうても、この銀河までの距離はおよそ3000万光年(!)。M81の「遠いもの記録」を、一気に倍以上更新したぞ。いやあ、今見えてるこのかすかな光は、なんと3000万年も前にあそこを出発して…(以下略)。

 (なお、M104までの距離は、自分が昔見た図鑑などでは「およそ5000万光年」となっていたように思うのだが、最近の観測結果では、3000万光年くらいということになったらしい。てか誤差のレベルもすごいぞ宇宙w)

 系外銀河を見るのって、楽しい。見えにくくて大変なのだけど、なんと言ってもこの、何千万光年ちゅうケタ違いの遠さは、ロマンだなぁと思う、くたびれたおっさんでありました。

 

おとめ座の「ソンブレロ銀河」M104(これはもちろん、最近になってから撮った写真w)