そろそろ店じまい?

40代のくたびれたおっさんゲイのよしなしごと

接眼レンズを買ってみる

 望遠鏡で星を見るには(少なくとも、眼視での観測には)、鏡筒本体の他に接眼レンズ(アイピース)が必要なわけである。で、うちにある接眼レンズは、はじめからセットで付いていた、20mm、12.5mm、5mmの3本である。うちの鏡筒は焦点距離1000mmなので、これでそれぞれ、50倍、80倍、200倍の倍率になる(倍率は、鏡筒の焦点距離÷接眼レンズの焦点距離で求められる)。

 別にこれで困るということではないのだが、このアイピースのセットには、昔からちょびっと不満をもっていた。まず、50倍の次が80倍というのが中途半端で、わざわざ付け替えても実際の見え方にあまり大きな変化がない。どうせなら10mm、ちょうど100倍だったらいいのに、とずっと思っていた。さらに問題なのは5mmで、これが暗くてもやもやで、いつ何を見ても(月以外)とても見づらい。一般的に、望遠鏡の有効倍率は口径のミリ数の2倍までと言われていて、うちの鏡筒は径100mmなので、200倍だと一応ギリギリこの範囲には収まっている。が、理屈も何もわかっていなかったガキの頃からの実視での感覚では、どうもこれはなるべくたくさん売りたい業界の戦略でw、本当の有効倍率は1.5倍位までではないかと思っている。まあ、これはうちの機材だけの話かもしれないのだけど、200倍というのは文字通り限界の倍率で、ちゃんとまともに見ようと思ったら(月以外は)150倍くらいが限度だろうというのが、おっちゃんの実感である。

 要するに、150倍くらいになる接眼レンズが欲しい、ということである。うちで言うと、6〜7mmくらい。

 更に実は、がさつな壊し屋wであった小学生の自分が、ファインダーを破壊した他にももう一つ置土産を残していっていたのであって(実はもう一つ後から更に重大な乱暴狼藉が判明して、これが大問題だったのだが、それはまた別の話)、それが接眼筒にかかわることだった。

 接眼レンズは、鏡筒本体の接眼筒部分に挿し込んで、それを小さなネジを締めて固定するようになっている。このネジを、子供の頃にどっかで落としてなくしてしまったのだ汗

 小学生の頃の自分は、まあただのネジだし、他のでも代用できるっしょ、と考えて、ネジ径を測り、家の道具箱の中をあさって、同じ3mm径の小さなネジを見つけた。ここまではまだ良かったのだが、そこは浅はかな小学生、ネジにはピッチというものがあるということを知らなかったのだ笑

 運悪く、道具箱の中から見つけ出したのはドリルビスで、ピッチは0.7くらい。もとのネジは普通のM3なので、0.5。これを無理やりねじ込んだものだから、あっという間にネジ山を破壊してしまった。なんかユルユルになっちゃってやべえな汗とは思ったのだが、ネジを斜めにして更に無理やりねじ込んでみたら、なんとなく止まったから、ま、いっか…

 …よくねえよクソガキw

 おっさんになった自分としてはもう真っ青である。摩擦で無理やり引っかかって止まっているだけなので、ちょっとしたはずみでポロッととれて接眼レンズがすっぽ抜けそうになる。実は、数十年ぶりに望遠鏡を復活させてから今の今まで、常に片手で接眼レンズが落ちないように支えながらの天体観測だったのである。もうイヤこんな生活w。これもなんとかしなきゃ…

 改めてよく見てみると、ネジ穴は接眼筒に直接開けられているわけではなく、接眼筒の先端にアダプターのような部品がついていて、それに開けられている。この部品だけ交換できれば良さそうだが、例によってこんなに古いものはもうないだろうし、と、更に調べたところで、また新しい事実が判明。

 うちの接眼レンズは、挿し込む部分の径が24.5mmで、これはツァイスサイズとかドイツサイズとか言われているらしい。

 が、これは今ではすっかり流行らない規格らしく、最近売られている機材は、アメリカンサイズとか言う31.7mm径がほぼ標準。

 だー、謎のアリガタ式wに続いてまたもや規格変更かよ。それもこれも、全部ドイツが戦争に負けたのが原因か(違う)。

 …が、更に調べてみると、このような規格の混在のせいで、この部分を変換するアダプターは逆に今でも普通にいっぱい売られていることも判明。うちのビクセン製の鏡筒の接眼筒部分のネジ径は40.6mmなのだが、ここに付けて31.7mm径の接眼レンズを使えるようにするアダプターも、普通に新品で安価に売っていた。ここにさらにもう一つ、31.7mm径のスリーブに24.5mmのレンズを付けられるようにするアダプターを買い足せば(これも安価でいくらでも売っている)、うちの40年選手のオンボロ接眼レンズ群も問題なくちゃんと使えて、しかも新しいネジでしっかり止めることができる笑。素晴らしい。今度はネジをなくさないように気をつけよう。

 この方法の良いところは、今後もし新しく31.7mm径の接眼レンズを買い足したとしても、なんの問題もなくそのまま付けられるところだ。これまた素晴らしい。

 …今後?

 いや、うちのこの40年選手のポンコツ望遠鏡には、今まさに、新たな可能性が開かれたのだ。最新の今風の接眼レンズも付け放題という、新たな可能性が。

 これを、単に可能性という話に留めず、実際に最新のレンズを取付けて、その新たな扉を自ら開いてやることこそが、持ち主としての義務というものではなかろうか。

 そうだ、ちょうどレンズのラインナップに少し不満もあったことだし、これはきっと、「この機会に新しい接眼レンズも買ってしまいなさい」という神のお告げなのだ。いや、もうそれに間違いない。買っちゃえ(ぉぃ)。

 …だって安かったんだもん。(^_^;

 そう、実は、思ったより安いということは、すでに確認済みだったのだ。昔から、カメラの交換レンズなどに比べれば望遠鏡の接眼レンズはだいぶ安かったとは思うのだが、今はもうびっくりするような値段で出ていて、なんか、カメラの交換レンズ1本買うお金があれば、20本くらい買えちゃう感じ?汗

 もちろん、高いやつはとても高いのだけど、そこは貧乏人の味方、中華製があるのだw。品質に多少問題があろうと、まあ、40年前の初心者用セットの付属品となら大して変わらんだろうし、そもそもうちの望遠鏡は、主鏡はカビてるし光軸合わせもテキトーなのだ笑。画質を云々するなど、はなからちゃんちゃらおかしいというものだ。

 というわけで、買ってみました新しい接眼レンズ。SVBONY社の7-21mmというズームレンズだ。SVBONY社は、前にファインダーを買ったら普通にちゃんとしていたので、今回も選んでみた。ズームの接眼レンズというのは、自分が子供の頃は、そういうものがあるということを聞いて知っていた程度で、もちろん実物を見たことも触ったこともなく、しかもけっこう高価なものだったように思う。いったいどんなもんなのか見てみたいという単なる興味もあって、ズームにしてみた。単焦点はもう持っているということもあるが、1本で3〜4本分をカバーする便利さはやはり魅力。もちろん、単焦点に比べれば画質は落ちるんだろうけど、そもそもうちの望遠鏡は…(以下略)

 

 

 焦点域の点でも丁度いい。念願の10mm100倍程度の倍率も使えるし、短焦点側は7mmなので、うちの鏡筒だと140倍ちょっと。まさに今自分が求めている通りのスペック。理想的。

 そしてなんと言っても一番魅力的なのはお値段。なんと6000円ちょっとで買えてしまう。昔中国製の折り畳み傘が100円で売っているのを見て、いったいどうやったらこんな値段で作れるんだとびっくりしたことがあったのだが、今やこんなものまでこんな値段で汗。正直これなら、もし届いたレンズが段ボールで出来てたとしても、話のネタにするだけで元取れるかも、とか思ってしまうw

 例によって通販で買ったのだが、中国本土から届いたっぽい袋を開け、小ぎれいな箱も開けると、中から出てきたのはやはり段ボール製ではなく、ちゃんとしたレンズでした(いい加減失礼かw)。いや、ファインダーに引き続き、思ったよりずっとちゃんとしている。作りもしっかりしているし、実際に星を覗いてみても、見え具合にもなんの不満もない。こうなると、いちいち付け替えずに済むズームレンズはやはり便利で、結局その後はうちの望遠鏡にほとんど付けっぱなしになっていて、こればっかり使っている(高倍率になってもアイポイントが高く、覗き口も広いのでとにかく見やすいというのも大きい)。

 低倍率側にすると視野が狭くなるのが顕著で、これはちょっと気になるのだが、実は自分が今まで使っていた古いケルナー20mmの視野角と比べればほぼ全く同じなので、別に悪くなったわけではない。まあ、今どきの長焦点レンズはもっと広いのが当たり前らしいので、そこはズームならではのトレードオフということなんでしょう。

 金星を覗いたときに、ものすごい色収差が出てびっくりしたのだが、まあ、これはこんなもんなんでしょう。他の天体では特に問題を感じたことはない。

 1点だけ、実は通販サイトのレビューで「ズームリングが固くて回しづらいのが欠点」と書いている人が何人もいたのだが、自分はむしろゆるいのは嫌いなので、その点は全く気にしていなかった。ところが、実際に届いたレンズは全く逆で、ズームリングは固いどころかスカスカ、なんの抵抗もなくスルスル動いてしまう。これは非常に不愉快だ。そもそも、焦点距離なんてそんなにしょっちゅう変えるもんでもなし、固くて何がいけないのか。逆に、ズームと名乗ってたって所詮はバリフォーカルレンズなのだから、不用意に焦点距離が変わると、ピントも一緒にずれてしまう。せっかく細心の注意を払って合わせたピントがずれてはかなわないから、ズームリングに意図せず触れないように、いつも気をつけてないといけない。これはとても不便。

 まさかとは思うが、レビューの意見や利用者からの要望を参考にして、メーカーや販売店が調整し直した結果だとしたら残念なことだ。そういう肝心なところは、一般の無責任な意見に安易に迎合せず、技術屋さんが最初に出してきた仕様を貫いて欲しい(まあ実際のところは、意図的な仕様ではなく、単なる製造上のばらつきなんでしょうけど。(^_^; )。

 いずれにせよ、「買ってよかった」レンズです。